「たとえば一間の鉄部屋があって、どこにも窓がなく、どうしても壊すことが出来ないで、内に大勢熟睡しているとすると、久しからずして皆悶死するだろうが、彼等は昏睡から死滅に入って死の悲哀を感じない。現在君が大声あげて喚び起すと、目の覚めかかった幾人は驚き立つであろうが、この不幸なる少数者は救い戻しようのない臨終の苦しみを受けるのである。君はそれでも彼等を起し得たと思うのか」


東北大学医学部で挫折して東京でニートをしていた魯迅に対して友人が説教した際に帰ってきたお言葉。
腐りきった中国社会を小説とかで正そうとしても意味なくね?ってことらしいが、このあきらめっぷりがたまらない。
一念発起して書いた作品が被害妄想に取りつかれた男を書いた短編「狂人日記」とのことで、読んだ時は昔っから統合失調症の人はいたんだなぁくらいにしか思わなかったけど、その背景を知ってなるほど納得。
人間の疑心暗鬼や他者への敵意は何百年も前から変わらず、頭がいかれて初めてそれに気づく、という皮肉たっぷりの良作だ。
それが中国近代文学の最高傑作とされているのも大層皮肉な話だと思うが。